Web 向けの 3D ゲーム作成の基礎

この記事は “Basics of building 3D games on the Web” の抄訳です。

「3D ゲームは、2D ゲームよりも作るのは難しい。だって管理しなきゃいけない次元が 1 つ増えているし。」

そう考えている人もいるでしょう。実際のところ、3D のゲームは私たちが想像しているよりも簡単に作れます。私たちは最近 MDN のゲームに関するコーナーを更新し、3D ゲームに関するチュートリアルを追加しました。このチュートリアルはフレームワークの利用に焦点をあてており、WebGL に不案内な Web ゲーム開発初心者でも 3D ゲームが作れるような内容になっています。

WebGL を利用したコンテンツの例

WebVR と 3D ゲーム開発

ブラウザ上での VR コンテンツは、今年に入って大きな進歩を遂げています。また WebVR として知られる JavaScript API の開発も進み、その仕様は バージョン 1.0 に向けての策定が行われています。これはブラウザ上での VR 技術にとって、大きなマイルストーンとなるでしょう。WebVR API が成熟してくると、コンテンツのレベルも「実験的なデモ」から商用ゲームや商用アプリケーションなどの「製品レベル」へと変わってくるでしょう。

Three.js を利用して作られている WebVR フレームワークである A-Frame も大きく進化しています。Cardboard Dungeon や SECVRITY のような興味深いケーススタディも行われ、またフレームワーク自身もバージョン 0.2.0 がリリースされ、コミュニティから早くも興味を寄せられる存在となっています。マークアップによってプラットフォームやデバイスで利用可能な VR コンテンツを作成する、という A-Frame のアプローチは単純ながら強力です。その結果として、チュートリアルやデモ、プラグインが毎日のように制作されるようになりました。

WevVR コンテンツが並ぶカタログサイト

現在は、最先端の VR を実験するにはとても良い時期です。しかし私のような 2D ゲームのファンにとっては、3 次元へと飛び出すのは、とてもハードルが高く感じられることでしょう。だから 3D の基本を一緒に学び、フレームワークを使えば印象に残るゲームやデモを作成するという目的を、より素早く達成できることを確認しましょう。

3D の Web ゲームは、リッチで、インタラクティブなアニメーションを Canvas へ、いかに ハードウェアアクセラレーションの効かせて WebGL でレンダリングするかにかかっています。それには作成物の情報を管理し、画面上への描画を行っているレンダリングパイプラインについて理解する必要があります。基本理論ではそのレンダリングパイプラインの動作について概観しています。

3D画像のレンダリングパイプライン:頂点を処理することでポリゴンを作成し、ポリゴンをラスタライズすことでフラグメントを作成、そのフラグメントを処理し画面に描画することで表示される。

3D ゲーム開発のためのフレームワーク

ゲーム開発を全て生の WebGL によって行うこともできますが、フレームワークを使うことで開発を簡単に、高速に行え、ゲームのアイディアに集中できるようになります。MDN に掲載されているチュートリアルでは以下のフレームワークを紹介しています:

Three.js は最も有名な WebGL アニメーションを作成ツールです。PlayCanvas はゲームエンジンである PlayCanvas Engine だけを利用することもできますが、オンラインエディタを利用して開発をすることも可能です。Babylon.js は強力な機能をもったシンプルな API を提供します。A-Frame は仮想現実における 3D 世界のプロトタイプ作成を高速に行うためのフレームワークです。またシェーダーの基本的な概念を理解するためのチュートリアルも用意しました。フレームワークの裏側で行なわれている勝利を理解することで、フレームワークによる処理が行われた後の結果を、より思い通りにコントロールできるようになります。

フレームワークを利用することの利点

ゲーム開発におけるフレームワーク利用の利点は何でしょうか?それは時間の短縮です。どのように短縮されるかを、見てゆきましょう:

PlayCanvas の Web サイト

まず、アセットのロード、シーンやスクリーンの描画といった、ゲーム制作の他の部分と比べて退屈な作業を減らせます。カメラ、光源など、それぞれ個別に設定が必要なものの管理もしなくてよくなります。ジオメトリを作成して、アニメーションを追加するだけで、後のことは何もしなくても、作品をすぐに見られるようになります。

ブラウザ実装の違いについても気にする必要がなくなります。ただフレームワークの提供するハイレベルでシンプルな API だけ知っていればよくなります。

フレームワークは多くのものを抽象化するので、開発者が書かなくてはならないコード量は少なくなり、また作業量も減ります。その結果、ゲームの核となる仕組みに注力できるようになるでしょう。フレームワークでは数行のコードで実現できる機能を JavaScript だけで実装しようとすると、最悪の場合は何十行にもわたることもあります。

PlayCanvas のオンラインエディタ

フレームワークが変わると、体験も変わります。Three.js はアニメーション作成によく用いられる一方、Babylon.js はゲーム開発に向いており、アンチエイリアスも行います。どちらもゲーム作成に耐えます。好みとプロジェクトのゴールにあわせて使い分けてください。

いくつかのフレームワークは機能レイヤーを追加し、物理エンジンや、衝突判定、パーティクルシステムが組み込まれているものがあります。このようなインフラを利用することで互換性に悩まなくてすみ、プラグインをカスタマイズしたり、一から書いたりする必要もなくなります。

シーンのプロトタイプ作成も簡単になります。複雑なコードを書かなくても、複雑なものを作成できるからです。こちらに JavaScript だけで実装されたシンプルなブロック崩しゲームがありますが、Phaser を利用して作成されたものと比べると、随分複雑になっていることがわかります。フレームワークを使うことで、時間が節約され、その時間を個性を出すために利用できるようになるのです。

PlayCanvas の GitHub レポジトリ

まとめ

フレームワークがどのように作成されているかを学ぶことは、良いプログラミング言語の学習になります。そしてフレームワークを拡張し、自分の望むように振舞わせることができるようになります。フレームワークには流行り廃りがありますし、フレームワーク固有の文法を追加で学ばなくてはなりません。結局、JavaScript だけで単純な機能を実装できるようになっているべきです。それは強力なスキルです。

それぞれのツールでシーンをどのように作るのかについては、私の GitHub レポジトリをみてください。これらの動作しているデモも公開しています

これだけは覚えておいてください。特定のフレームワークを使わなければゲームを作れない、ということはありません。同じことを JavaScript と WebGL だけで実現できます。紹介したデモは、現在よく使われているツールの使い方を示すためのものです。足りないツールがある場合は、ぜひデモを作成して GitHub の方へ追加してください。いつでも歓迎します。またデモに含まれないツールがあれば、こちらにコメントを残すか、紹介を書いてください。多くの人知ってもらえるようになるでしょう。

上記で紹介したソースコード、ば新しい 3D ゲームのテンプレートにするといった感じで、自由に使っていただけます。使ったら、作ったものを教えてください。こちらにコメントをする形でも、GitHub のレポジトリにコメントする形でも、フィードバックはいつでも歓迎です。

Andrezej Mazur について

HTML5 ゲーム開発者で、Enclave Games のファウンダー。Gamedev.js という週間メルマガの発行人で、HTML5 ゲーム開発者向けのコーディング大会である js13kGames の発起人。新しいオープン Web 技術について技術講演を行い、WebVR に夢中になっている。

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1 件のコメント

  1. 白衣 :

    勉強になりました