Firefox マルチプロセス化の今後

[この記事は米国 Mozilla Future Releases ブログの記事 “What’s Next for Multi-process Firefox” の抄訳です。]

Electrolysis とは Firefox のプロセスを複数に分割することによりブラウザのレスポンス性、安定性、そしてセキュリティを向上させる Mozilla のプロジェクトのコードネームです。この取り組みの最初のフェーズは、 Firefox のプロセスを UI の処理とコンテンツの処理とへの分離です。

このマルチプロセス化を可能にするアーキテクチャの第1段階が、Firefox 48 を利用している一部ユーザに今週から提供されます。これは Firefox 史上最大の変更でもあるため、ゆっくりと行う必要があります。 Firefox 48 では、テスト段階で正常な動作が確認されているユーザクラスを対象にし、その中の 1% のユーザに対して Electrolysis を有効にします。対象者のデータで安定性とエンゲージメントを確認し、問題がないか様子を見ます。この初期段階で問題が起きなければ、このユーザクラスの100%にまで徐々に対象者を拡大していきます。これは、全 Firefox 48 ユーザの約半数となります。

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アドオン

Electrolysis のベータテストに問題がなければ、 Firefox 49 ではマルチプロセスとの互換性が確認されている一部アドオンを利用しているユーザに対象を拡大します。 このテストでも問題が起きなければ、 Firefox 50では対象を更に拡大させ、 Electrolysis との互換性があると表示しているアドオン、あるいは互換性を保証する新しいバージョンの WebExtensions add-on API で制作されたアドオンを利用しているユーザも範疇に含めます。ゆくゆくは全ユーザを対象に Electrolysis を有効化しますが、これに伴い互換性のないアドオンは機能しなくなる可能性があります。そのため、アドオンをアップデートし常に最新版を利用することが非常に重要になります。

アクセシビリティとタッチスクリーン

マルチプロセスに関する次の大きなアップデートは Firefox 51 を予定しています。ここでは Firefox をタッチスクリーンで利用しているユーザ、アクセシビリティ機能と併せて利用しているユーザ、そして RTL (右から左へ記述する)言語環境で利用しているユーザを対象に Electrolysis を有効化します。これで重いページのロード途中でもレスポンス性を失わない UI を可能にする Electrolysis 展開の第一フェーズが終了します。

しかし、これで終わりと言う訳ではありません。

コンテンツのマルチプロセス化

第二段階では、コンテンツのマルチプロセス化を行います。第1段階でコンテンツと UI の処理を分割することで、コンテンツの読み込みが UI の反応性に影響が出ないようになりました、次の段階ではコンテンツのプロセスを更に分割します。これにより、たとえば一つのページが重くても、他のタブでのページの読み込みが遅くなることがなくなります。この機能は既に開発を進められており、2017年の前半にリリースされる予定です。

並行してコンテンツ処理のサンドボックス化も進めています。 サンドボックス化によって、 Web コンテンツからのブラウザや OS へ対するアクセスを制限できます。これはFirefox ユーザを様々な危険性から守ることになります。テストが正常に進めば、この機能を今年中にお届けできる見込みです。

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アドオンのプロセス分離

マルチプロセス化に関するプロジェクトの最終段階は、アドオンの別のサンドボックスへの分離です。 コンテンツのマルチプロセス化やサンドボックス化がパフォーマンスやセキュリティの向上に繋がるのと同様に、アドオンを別のプロセスに分離することで、アドオンに起因するブラウザや Web の速度低下や、エクステンションを通して起こる Firefox への一部攻撃を防げるようになります。これは、まだプロジェクトの初期段階にあります。

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Electrolysisは膨大なプロジェクトであり、完了にはまだいくつものリリースが必要となります。しかし作られた土台は強固なものです。エンドユーザにリリースされ始めたこの第一段階をベースに、さらなるレスポンス性とセキュリティの強化を向こう数カ月に渡り開発を続けていきます。そしてこれは、競合である他のブラウザに比べて Firefox の優位性である メモリ消費の抑制を保ったまま行っていきます。

Firefox 史上最大のアップデートに関しては、今後もこのブロクや他の Mozilla 関連のブログにてお知らせしていく予定です。

1 件のコメント

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