ARM 版 Windows ユーザーにもブラウザの選択肢が必要だ
原文:Windows on ARM Users Need Browser Choice Too
過去8年間、ユーザーと開発者は快適なデジタルライフを過ごすことのできるように、ブラウザの選択肢を与える Windows プラットフォームを楽しんできました。これは常にそうであったわけではありません。 Firefox が2004年に登場する前、ブラウザはただ1つ Windows – Internet Explorer のみでした。2005年から2009年にかけては、ただ IE と Firefox だけが Windows プラットフォームにおいて意味のあるシェアを築いていました。選択肢はさらに Chrome の登場に伴って増加し、今日ユーザーは様々なブラウザを選択することができます。 かつてそのような状況があったことを想像するのは難しいこととなりました。不幸なことに、 ARM 版 Windows の迫るリリースとマイクロソフトの Windows 8 Metro に対するブラウザの実践は、ユーザーと開発者にブラウザ選択の自由が与えられない、招かれざるデジタル暗黒時代への回帰を示しています。
Windows RT (マイクロソフトが ARM 版 Windows に与えた名称) は二つの環境、クラシック環境とアプリ向けの Metro 環境が存在すると報じられています。しかしながら、 ARM 版 Windows では特権的な IE を除き、あらゆるブラウザがクラシック環境での動作を禁じられています。 実際のところ、 Internet Explorer のみがユーザーが慣れ親しんできた速度、安定性、セキュリティのようなモダンブラウザの高度な機能を実現できるということです。IEがARM 版 Windows で動く以上、他のブラウザが技術的理由で同じことができない理由はありません。
なぜこれがユーザーにとって問題なのでしょうか? とてもシンプルなことです。なぜなら現在設計されている ARM 版 Windows はユーザーの選択肢を制限し、競争と、打ち震えるような革新を減少させているからです。 IE のみがモダン web ブラウザとして高度な機能を許されることによって、 サードパーティのブラウザはプラットフォームから明らかに除外されてしまいます。これは今日のタブレットや未来の PC ユーザーにとって問題です。 ARM チップセットが主に電話やタブレット端末に今日使用されているのに対して、 PC ハードウェアプラットフォーム上でも同じように 将来的には ARM は 重要になっていくでしょう。 これらの環境(訳注、既存の XP や 7 のような Windows OS 上)では現在 、ユーザーと開発者双方に利益をもたらす強烈なブラウザの競争が起きています。 PC がとても幅広いフォームファクタと設計に対応している現状に視野を広げてみれば、あるいは他の様々な予測からも、ARM上で動作する Windows がラップトップやタブレットや携帯電話をはじめとしたデバイスの全範囲で動作するであろうことは簡単に想像できます。これは ARM 上で Windows が動作する環境がある限り、ユーザーがただ 1 つのブラウザしか選択できないことを意味します。
我々は、 Microsoft がユーザーの選択に関する原則を堅持することをお勧めします。サードパーティ製のブラウザを除外することは、ユーザーと開発者が何年も依拠しているMicrosoft 自身の公表原則と矛盾しています。これらの原則は、司法省への独禁法対策という一側面を超えて、注目すべき Microsoft の市場に対するアプローチの表明となりました。
ARM 版 Windows はブランド、コード、フットプリント、および経験を含む非常に多くの従来の Windows の資産に依存しているので、 IE 以外のブラウザを除外することには独禁法への影響があるかもしれません。もしも ARM 版 Windows が単なる新しいハードウェアに対する「新しい Windows」であるとしても、それはまたEC のブラウザ選択に関する同意(pdf)に抵触しうると同時に、そのようなふるまいは司法省と Microsoft の同意(訳注、 Microsoft の市場独占による競争阻害を防ぐための同意)がまさしく禁止しようとしていたことそのものです。
ARM デバイス上の次世代 Windows が1つのブラウザにユーザーを縛り付けるという方向性は理不尽であり、新しいプラットフォームへのロックインの第一歩を表しています。それはこのような方法である必要はありません。かつて発表された Windows の原則において、 Microsoft社の ジェネラルカウンセル Brad Smith 氏は“世界中で幅広く使用されているオペレーティングシステムの製作者として、我々は情報技術業界での技術革新を進めること、競争を維持を援助することの双方に特筆すべき責任がある”と表明しています。 我々はマイクロソフトがユーザーの選択に関する原則を堅持し、閉じられた道(訳注、ユーザーの選択肢を奪うようなプラットフォームの構成)へ進みたいという誘惑を排除することをお勧めします。世界はこれ以上閉じた独自の環境を必要としていませんし、Microsoft にはそれ以上のものになる機会があります。
– Harvey Anderson, Mozilla ジェネラルカウンセル