Firefox 14 の主な新機能を紹介します

今週は Firefox 13 がリリースされ、続けて Firefox 14 のベータ版も公開されました。ベータ期間中は安定性や互換性の修正が行われるのみで、基本的には新機能は追加されません。Firefox 14 のリリースは 7/17 を予定していますが、機能がほぼ確定するベータ版リリースに合わせ一足先に主な新機能と改良点をご紹介します。

Android 版は抜本的な再設計を行っており、ベータ期間を長く取るため既にベータ版を Google Play で公開中です。Android 端末をお持ちの方は、起動時間の短縮やパフォーマンスの向上をした上でユーザインターフェイスの刷新や Flash サポートを行った新バージョンをお試しください。

Firefox 14 の特長

Firefox 14 では組み込みの Google 検索に HTTPS を利用するようにしたり、ロケーションバーのサイト情報表示を刷新することで、ユーザのセキュリティやプライバシーを高める改善を行っています。

使い勝手の面では、ロケーションバーのインライン自動補完、プラグインの Click to Play、OS X Lion 用のネイティブフルスクリーン機能などを導入して更に快適なブラウジングを可能にしました。

開発者向けには Pointer Lock API をサポートしてマウスを使った FPS ゲームなどを Web でも実現可能にしたり、インスペクタでターゲット要素の切り替えや疑似クラスロックなどをし易くなるよう使い勝手を向上しています。

ユーザ向けの新機能・改良点

Google 検索に HTTPS 接続を使用するようになります

一言で言えば、Firefox の Google 検索でプライバシーとパフォーマンスが向上します

Google では 2010 年から検索サービスへの HTTPS 導入が進められており、昨年 11 月には Google アカウントで google.com にログインしているユーザはデフォルトで HTTPS 接続するように変更され、今年の 3 月には google.co.jp についても同様の変更が適用されました。検索パートナーである Firefox では、スタートページや検索バーでの検索、あるいはロケーションバーでのキーワード検索の初期設定には Google 検索が採用されていますが、今回 Firefox からの検索についても HTTPS への切り替えが許可され、Firefox 14 から変更が反映されることになりました。

これはユーザにとっては 2 つの意味があります。第一にユーザのプライバシー保護が強化されます。HTTPS 接続を使うとユーザの検索クエリーが Google 以外に知られることは無くなります。暗号化通信を使用するため公衆無線LAN やセキュリティのない通信環境等で通信している場合でも検索を傍受されることはなく、検索結果ページでクリックした時にリンク先のサイトに送信される Referrer に検索キーワードが含まれなくなります。

第二に、Google 検索は HTTPS 接続する場合、Firefox 13 からデフォルトで有効になった SPDY に対応しています。そのため、Firefox からの検索や検索サジェストのための通信には SPDY が利用され、パフォーマンスが向上します

Web サイトの管理者にとっては、Firefox 組み込みの Google 検索経由でアクセスしてきたユーザの検索キーワードを Referrer から取得できなくなります。

補足: HTTPS サイトから別ドメインの HTTP サイトに接続する場合、RFC 2616 に従って Referrer 自体が送信されなくなりますが Google では HTTPS でも検索結果ページのリンクは HTTP の google.com などを経由してリダイレクトしており、Referrer 自体は送信されます。

ロケーションバーのサイト情報表示 UI が新しくなります

ロケーションバーではこれまで「favicon(ファビコン)」と呼ばれるサイトのアイコンが表示されていましたが、サイトへの接続の安全性を表すアイコンが表示されるようになります。その他に文字色や背景色などを調整して、HTTP、HTTP/SSL 混合、SSL、EV SSL 接続のいずれで接続されているか誰もが一目で分かるようになりました

なお、サイトの favicon はこれまで通りタブに表示されていますのでご安心ください。

ロケーションバーで URL のインライン自動補完に対応します

これも一言で言えば、以前ロケーションバーに入力した URL を素早く入力できるよう支援する URL 自動補完機能が搭載されました。

Firefox 3 以降のロケーションバーはスマートロケーションバーや Awesome bar (凄いバー)などと呼ばれるように、履歴やブックマークのインクリメンタル検索や、検索エンジンでの検索スマートキーワードによる検索などの機能が搭載されていますが、今回さらに、URL のインライン自動補完が導入されました。

ロケーションバーに文字を入力し始めると、以前ロケーションバーから開いた URL のうち、最も利用頻度が高いサイトのドメインが自動補完されます。

例えば mozilla.jp をよく開くのであれば、”m” と入力しただけで mozilla.jp/ まで補完され、Enter キーを押すだけでアクセスできます。mail.mozilla.org も開いたことがあれば、”ma” と入力しただけで mail.mozilla.org/ まで補完されます。

maps.google.co.jp にもアクセスしたことがあれば、”ma” まで入力した時点で mail.mozilla.org と maps.google.co.jp の利用頻度の高い方が自動補完されます。maps.google.co.jp/ と補完された場合でも “mai” まで入力すると mail.mozilla.org/ が補完されます。

インライン自動補完は / 区切りで行われます。最初はドメイン名までが補完されますが、”m” に続けて “→” (右矢印)キーを押せば mozilla.jp/まで入力が確定し、続けてディレクトリの補完入力が行えます。http://mozilla.jp/firefox/ にアクセスしたことがあれば “m → f” に続けて Enter キーでアクセスできます。

なお、この機能はユーザが入力したことのある URL に再度最小限のキーボード入力でアクセスできるようにするための機能であり、ロケーションバーから開いたことがないページの URL は補完対象になりません。ロケーションバーからは開いたことがないページについては、これまで通りドロップダウンで表示される候補ページから Tab キーや上下キーで選択してアクセスしてください。

プラグインの Click to Play に対応します

Flash などのプラグインコンテンツはそれ以前にはなかったリッチなコンテンツを実現しましたが、一方でブラウザのクラッシュ、セキュリティホール、CPU やメモリの使用量を増やす原因になることも少なくありません。そのため、プラグインコンテンツは必要な時にクリックしたら読み込めるようにする Flashblock などのアドオンがよく使われています。

Firefox 14 からはこれと同様に、プラグインについてはクリックしたら再生 (Click to Play) するよう設定可能になりました。標準の環境設定画面にはこの機能を有効にする画面は用意されていませんが、about:config ページで plugins.click_to_play の値を true にすることで有効化されます。

なお、Click to Play の設定はサイト毎に保存されます。サイト別の設定を変更する時は右クリックメニューの「ページの情報を表示」(または Ctrl+I キー)で開かれる「ページ情報」→「サイト別設定」→「プラグインの実行」で変更してください。あるいは、about:permissions というページを開くと全サイトの設定を一括管理できます。

OS X Lion のフルスクリーンサポート

Mac 版の Firefox ではアプリケーション独自のフルスクリーン機能を提供してきましたが、OS X Lion (10.7) 以降で使用する際には OS ネイティブのフルスクリーン機能が使えるようになります。

Safari からのデータインポートが刷新されます

Firefox には IE, Chrome, Safari からユーザデータをインポートする機能が備わっていますが、Safari については Windows 版では対応しておらず、Mac でも比較的最近追加された機能の設定を移行できませんでした。

今回 Safari のデータインポート機能が刷新され、Windows でもデータの移行が可能になり、フォント、ダウンロードフォルダ、スペルチェック機能などの設定も移行できるようになりました。

Web 開発者向けの新機能・改良点

Pointer Lock API のサポート

ファーストパーソンシューティング (FPS) ゲームなどでは、マウスを動かした時にマウスポインタを動かすのではなく、ゲーム内の 3D 空間で視点を回転させるといった使い方をすることがあります。

Firefox 14 では Web アプリケーションでもこのようなマウスの使い方を可能にする Pointer Lock API をサポートします。これを使うとマウスを移動させた時にマウスポインタを移動するのではなく、マウスの移動距離を取得できるようになります。

この API の使用法について詳しくは MDN の Pointer Lock API ページをご覧ください。

インスペクタの UI を改善しました

Firefox にはページ中の要素を調査する開発者ツール「インスペクタ」が標準搭載されていますが、Firefox 14 ではこのツールの UI を改善してこれまでより効率的に使えるようになりました。

特に、インスペクタで要素を選択した時に要素名、ID 属性、クラス属性を表示した吹き出しが表示されますが、この吹き出しの左右にボタンが追加されています。左側ボタンをクリックすると、再び要素を選択するモードに切り替わります。ツールバーの左端にも同じボタンがありますが、ここにボタンが追加されたことでマウスを大きく動かさずとも次々と要素を調査していけるようになりました。

右側のボタンをクリックするとコンテキストメニューが表示され innerHTML/outerHTML のコピーやノードの削除ができるほか、疑似クラスロックのオンオフを素早く切り替えられます。また、インスペクタのツールバーではソース表示ボタンや要素の階層を表すパンくずリストメニューのデザイン改善なども行っています。

関連情報

以前のバージョンについて

2 件のコメント

  1. fajrovulpo :

    「Gooogle アカウント」→「Google アカウント」

    1. dynamis :

      Oooops! Thanks!