HTML5の人々 – Bruce Lawson

今後のHTML5の普及にあたり、主導的に普及を進める人々の存在は必要不可欠である。今回私達Mozillaでは、現在この役回りを演じる人々をインタビューと短いビデオにより紹介する。インタビューの形式は、我々が予め用意した10の質問に対する文字ベースの回答と、彼らの自己紹介及び回答に対する詳細を含むビデオによって構成される。

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我々が最初に紹介するのは、Opera所属、Introducing HTML5共著者であり、HTML5 Doctorの監督者であるBruce Lawson(@brucel)である。

ビデオインタビュー

ビデオインタビューはYoutube、もしくはArchive.orgより以下の形式にて閲覧可能である。WebM (45MB)OGG (70 MB)MP4 (70 MB)

Bruce Lawsonへの10の質問

1) あなたの考えるHTML5は何か、また今後のWeb開発を考えたときのHTML5の持つ意味合いは?

HTM5はwebアプリケーション開発用の言語であり、アプリケーションをより堅牢かつ互換性のあるものにする、また、webブラウザの可能性を最大限に発揮することにより、webをよりネイティブなアプリケーショに近づける可能性を持っている。

2) HTML5の世界と関わることになったきっかけ、及びHTML5への貢献を行う際のモチベーションは?

私の背景はアクセシビリティとマークアップ言語の記述にある。よって、webにおける新しい言語の開発作業へは嬉々として参加した。また、現在働くOperaがHTML5の立ち上がりに大きく関わっていたため、(仕事の時間を使った)HTML5への開発従事を私のボスは喜んで承認してくれた(笑)

3) 最もエキサイティングだと考える最新技術は?

もちろんHTML5!また、DAP (Device APIs and Policy Working Group)に対しても最近は大きな関心を持っている。DAPはGeolocationがブラウザ経由で嬉々のGPS情報を取得することが可能であるように、カメラや手帳、カレンダーといった実世界におけるデバイスをWeb上で利用する為のAPIの策定を行っている。HTML5のように、DAPでは既存の優れたAPIを包括し、DAP促進の為にデバイスの生産者等によるサポートも受け付けている。

4) HTML5に関する書籍(Introducing HTML5)を執筆するにあたり、最も困難だと感じたことは?そもそも現段階ではHTML5の定義はまだ曖昧なのでは?

時代遅れな出版プロセス(全ての文章はMicrosoft Wordにて執筆されなければいけない!)以外は、執筆作業と同時進行でHTML5の仕様が動的に更新されたことが困難だと感じた。例えば、ビデオに関する章の構成と目次付が行われたのと同時に、webMのフォーマットが発表され、我々は再執筆を余儀なくされた。とはいえ、我々の本で対象とした多くの根本的な事柄に関しては読んですぐに実用可能であると思う。

5) HTML5に対する新しい名称として”NEWT”を提唱されているが、そもそもの言葉の意味合いと、HTML5でいけない理由は?

クライアントやジャーナリストは、CSS3、iなんとか上で視聴可能な動画、地理情報を使用可能なアプリケーション、をHTML5と称するだろう。確かにこれは新しいWeb2.0だが、CSS記述のセマンティックスが存在しないように、HTML5では画像のトランジションは存在しない。

DAP、CSS 3、HTML5、Geolocation, SVG, WebGLを総称するネーミングが必要ならば、Open Web Stack と命名するべきだ。しかし、人々は往々にしてシンプルかつキャッチーなネーミングを好むため、私はこれに対する皮肉も込めてNEWT(New Exciting Web Technologies)と命名した。

6)  HTML5普及に伴う最大の弊害は?

開発者の勉強不足が大きな弊害だと感じる。”完成されてない規格だから使えない”、”IE6のサポートをする必要があるから使えない”等が主な言い訳としてあげられる。この内私は前者の言い訳が最も嫌いだ。完成されていないから使えないのであれば、人々は英語という未完成の言語を使うのを辞めて、1799に完成したと思われるフランス語を使えば良い。

IE6サポートの問題に関しては、javascriptが使用可能な環境であれば、HTML5のエレメントをIE6上で実現することは容易である。そもそもjavascript無しで現在のWebをサーフィングすること自体、ユーザ体験を劇的に低下させかねないため、これは言い訳として不適切である。

7) 古いブラウザへのHTML5の普及に関する修正が盛んに行われているが、サポートに伴う余分なコードやファイルが多数存在する。これは、本当に必要なことなのだろうか?あなたの”polyfills (アドオンによる非互換性の穴埋め)”に関するスタンスは?

RemyのHTML5 Shimを用いれば、大体の古いブラウザへのHTML5の互換性は確保することが可能である。プロジェクトによって個別のpolifillを用いることは確かに面倒ではあるが、同機能のコードをスクラッチから書くことに比べたら随分楽である。

Polifillは古いブラウザのみを対象としており、HTML5互換の新規のブラウザに関してはそもそもpolifillの存在すら知られていない。polifillはエレガントなものではないが、ユーザの締め出しやブラウザのスニッフィングを防ぐためにも必要なものであると考えている。

8)  HTML5の推奨デザインパターンのうち、望ましくないと考えるものは何か?

Canvasへのアクセシビリティに関して、開発初期の段階でより細かい規定がされていれば良かったと思っている。現在多くの人々が独自の手法に基づいてユーザインタフェースの構築の際にCanvasを用いており、使用法に関して一貫性がない。今後の普及に伴い、一つの大きな問題になるのではないかと考えている。また、人名の周りにCITEを使用することが出来ないのは、馬鹿げだ仕様だと考えている。

9) HTML5に関して学ぶ場合、最適なスターティングポイントはどこか?

HTML5の入門に関して素晴らしい書籍はたくさん存在する。Mark Pigrimのオンライン書籍は導入として素晴らしい。私が共著したHTML5 Doctorは初級者を対象とした単発の記事が多数含まれている。

10) HTML5はHTML4.01やXHTMLに比べてマークアップの記述により寛容である。例えば、大文字と小文字タグの組み合わせや、アトリビュート周りのクォートを省略することが可能である。コードの品質を考えたときに、これは望ましくないのでは?

一言で言えば、そんなことはない。XHTML1やHTML4からHTML5へ移行することは容易であるし、そもそもブラウザの歴史上コードシンタックスに関してはあまり重要視されていない。プログラマーは自分にとって馴染むスタイルでコードを記述できるべきであるし、スタイルの統一に最してはHTML Lint等を用い、プロジェクトで使用するスタイルを決定することが可能である。

ボーナス:今後のWeb、及びWeb開発をより良いものとするための大きな課題は何か?

より分かりやすいCSSレイアウトのメカニズム、canvasやwebGLへのアクセシビリティの向上、そしてnude Open Standards evangilistsのより精力的な活動が必要不可欠である。