ファイル書き込み処理を別スレッドで行う

注意: この記事の内容は Firefox 3.6 以降で追加される新機能について触れています。

Firefox ではブラウズ中のセッション状態を保存するために、デフォルトで10秒に1回、JSON形式のデータをプロファイルフォルダ下の sessionstore.js へ書き出す処理を行っています。
しかし、 Firefox 3.5 まではこの処理が原因で YouTube の動画閲覧中にプチフリーズが頻発するといった現象が見られたようです。そこで、 Firefox 3.6 以降では、ファイル書き込み処理を別スレッドで行うことで、このプチフリーズが発生しないよう改善されることになりました (Bug 485976 – Move writing sessionstore.js off the main thread)。

この別スレッドでのファイル書き込み処理は nsIAsyncStreamCopier という XPCOM にて実装されていますが、 NetUtil.jsm という JavaScript モジュールをインポートすることで、拡張機能などから簡単に利用することができます。

サンプル

以下、別スレッドにてファイルへ文字列を書き出すサンプルを作ってみます。なお、ソースコード中の Cc, Ci は、それぞれ Components.classes, Components.interfaces への参照です。

最初に、 JavaScript モジュールをインポートします。当然インポートは最初に一度だけ行えば良く、ファイルへの書き出しを行うたびに行う必要はありません。

Components.utils.import("resource://gre/modules/NetUtil.jsm");

次に、書き出し先のファイル(nsILocalFile オブジェクト)を生成します。なお、変数 path の値は各自の環境に合わせて適宜修正してください。

var path = "C:\\***.txt";
var file = Cc["@mozilla.org/file/local;1"].createInstance(Ci.nsILocalFile);
file.initWithPath(path);

次に、 nsISafeOutputStream によって安全にファイルへ出力するためのストリームを生成します。どういうことかと言うと、ファイル書き込み中は「test-1.txt」のような別名の一時ファイルへ書き込み、書き込みが完了したら本来の「test.txt」へ上書きすることで、ファイルが破損しにくい仕組みとなっています(参考)。

var ostream = Cc["@mozilla.org/network/safe-file-output-stream;1"].
              createInstance(Ci.nsIFileOutputStream);
ostream.init(file, -1, -1, 0);

次に、ファイルへ書き込む文字列から、入力用のストリームを生成します。

const TEST_DATA = "this is a test string";
var istream = Cc["@mozilla.org/io/string-input-stream;1"].
              createInstance(Ci.nsIStringInputStream);
istream.setData(TEST_DATA, TEST_DATA.length);

なお、日本語を含む文字列を UTF-8 エンコードでファイルへ書き出す場合、以下のように nsIScriptableUnicodeConverter を使って入力用ストリームを生成します。

const TEST_DATA = "これはテスト用文字列です";
var converter = Cc["@mozilla.org/intl/scriptableunicodeconverter"].
                createInstance(Ci.nsIScriptableUnicodeConverter);
converter.charset = "UTF-8";
var istream = converter.convertToInputStream(TEST_DATA);

最後に、 NetUtil.asyncCopy を使い、入力用ストリームを出力用ストリームへコピーし、別スレッド上でファイルへの書き込みを行います。3番目の引数は別スレッドでのファイル書き込みが完了した際に呼び出されるコールバック関数です。

NetUtil.asyncCopy(istream, ostream, function(result) {
	if (Components.isSuccessCode(result))
		alert("ファイル書き込み成功");
});

今回のサンプルでは書き出す文字列が少ないため、別スレッドで処理が行われていることを体感できないと思います。そこで、以下のように長大な文字列を生成して試してみると、 Firefox がフリーズすることなくファイルへの書き出しが行われることが体感できるかと思います。ただし、 for ループ自体が重いため、ファイル書き出し前にフリーズが発生します。

var TEST_DATA = "";
// ループ回数を少しずつ増やしながら調整してください
for (var i = 0; i < 100; i++) {
	TEST_DATA += "this is a test string\n";
}

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